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「オンコールが怖い」の正体|訪問看護の夜、実際に何回鳴るのか




訪問看護をためらう理由、その第1位


訪問看護に興味を持った人が、最後の最後で足を止める場所。それがオンコールです。

「夜中に呼ばれるんでしょう?」 「携帯を持って帰るなんて、休んだ気がしない」 「一人で夜、判断できる自信がない」

この不安は、まったく正当なものです。ごまかす必要はありません。オンコールは、訪問看護という仕事に確かに存在する負担です。

ただし——「オンコール=毎晩呼び出される」というイメージは、実態とかなり違います。

この記事では、オンコールの実際を、感情ではなく構造で分解します。


そもそもオンコールとは何か(制度から理解する)

「なんとなく夜の待機」と思われがちですが、オンコールには明確な制度的裏付けがあります。

24時間対応体制加算(医療保険)/緊急時訪問看護加算(介護保険)

訪問看護ステーションが「24時間、いつでも連絡が取れて、必要なら訪問します」という体制を届け出ると、この加算が算定できます。

利用者さん側から見れば、月額数百円〜千円程度の負担で、24時間つながる安心を買っているということです。

つまりオンコールとは、

  • 「必ず訪問するサービス」ではなく

  • 「必ず連絡がつくサービス」

です。

ここが最大の誤解ポイントです。電話が鳴る=出動、ではありません。


電話が鳴ったとき、何が起きているか

実際にかかってくる電話の中身は、おおむね次のように分かれます。

① 電話対応だけで完結するもの(大多数)

  • 「熱が37.8℃あるんですけど、明日の受診でいいですか」

  • 「胃ろうのチューブから少し漏れてます」

  • 「便が3日出ていません」

  • 「ずっと眠っていて起きないんですが、いつもと同じでしょうか」

  • 「点滴の残りが減らないんですが」

これらは、電話で聞き取り、判断し、指示を出せば終わります。

「明日の朝一番で訪問しますので、それまで◯◯の姿勢で様子を見てください」 「そのチューブは、いったんこう固定してください。明日の訪問時に交換します」

オンコールの本質は「訪問」ではなく「相談窓口」です。

② 実際に訪問が必要なもの

  • 尿道カテーテルの閉塞

  • 気管カニューレの抜去

  • 転倒し、動けない

  • 呼吸状態の明らかな悪化

  • 看取り期の方の状態変化・死亡確認への立ち会い

このうち、訪問看護師が「必ず動く」と最初から分かっているのが、看取り期の利用者さんです。

③ 救急要請・往診依頼につなぐもの

胸痛、意識障害、大量出血——これは訪問看護師が抱え込むケースではありません。

救急要請するか、主治医に往診を依頼する。それが正解です。

「一人で全部解決しなければならない」というオンコールは、存在しません。


「実際、何回鳴るのか」

ここが最も知りたい部分だと思います。

一般に、訪問看護ステーションのオンコールは、「鳴る夜」より「鳴らない夜」のほうが圧倒的に多いというのが実感です。

そして重要なのは、鳴る夜には理由があるということです。

オンコールが鳴る夜は、だいたい予測できる

  • 看取り期の利用者さんがいる

  • 状態が不安定な方が在宅にいる

  • 退院直後で、家族がまだ不慣れ

  • 医療機器(人工呼吸器・在宅酸素)を使っている方がいる

逆に言えば、「今夜は静かだろう」も予測できます。

当ステーションでは、オンコール担当者に引き継ぐとき、必ずこう伝えます。

「今週は、Aさんが看取り期に入っています。娘さんは在宅で看る意志が固いですが、夜間の呼吸変化には不安があるようです。鳴る可能性が高いです」
「Bさんは先週退院したばかり。奥様が吸引に不慣れなので、手技の相談で電話が来るかもしれません」

「何が来るか分からない不安」と、「Aさんの件で鳴るかもしれない」は、まったく別の重さです。

情報が共有されているだけで、オンコールの心理的負担は劇的に下がります。


「一人で判断できる自信がない」への回答

これは、未経験者から最も多く聞く不安です。

答えは明確です。

オンコール担当者も、一人ではありません。

判断に迷ったら、管理者・先輩看護師に電話していい

当ステーションでは、オンコール担当者が上位者に相談することを推奨しています

「これ、訪問すべきでしょうか」 「主治医に連絡していい時間帯でしょうか」

こう聞ける相手がいることが、オンコール体制の前提条件です。

「オンコール担当者が一人で全責任を負う」という設計は、そもそも危険です。それは体制の不備であって、看護師の力量の問題ではありません。

主治医にも連絡していい

訪問看護指示書には、主治医の連絡先が記載されています。

「夜中に医師に電話するなんて」とためらう必要はありません。在宅医療を担う医師は、それを前提に引き受けています。

むしろ、報告すべきときに報告しなかったほうが問題になります。

判断基準は、事前に作れる

「どうなったら訪問するか」は、感覚ではなく基準で決められます。

当ステーションでは、状態が不安定な利用者さんについて、事前にこう共有しておきます。

Cさん(心不全) ・SpO₂ 90%未満、または起座呼吸出現 → 訪問+主治医連絡 ・体重が3日で2kg以上増加 → 翌日の訪問前倒しを検討 ・胸痛 → 救急要請

基準があれば、夜中に悩む必要はありません。照合すればいいだけです。


オンコールの負担を「減らす」ための仕組み

精神論では、オンコールの負担は減りません。減らすのは仕組みです。

1. 担当を回す

一人の看護師にオンコールが集中する体制は、確実に離職を生みます。当ステーションでは、複数名で輪番制を組んでいます。

2. 手当を明確にする

オンコール手当は、待機に対する手当と、実際に出動した場合の手当を分けて設計するのが基本です。

「携帯を持っているだけの夜」と「実際に夜中に出た夜」を同じ額で処理するのは、公平ではありません。

3. 出動した翌日の配慮

夜間に出動した場合、翌日の訪問件数を調整する、あるいは遅出にする。これは体制として組んでおくべきものです。

「夜中に3時間動いて、翌日も通常通り5件」——これを続ければ、人は必ず壊れます。

4. 情報共有を徹底する

前述の通り、オンコールの負担の大半は「情報の欠如」から来ます。

「今夜、誰が、なぜ、鳴りうるか」が共有されているだけで、担当者の精神的負担は半分以下になります。

5. 「鳴らせない体制」を作らない

逆説的ですが、「電話しにくい雰囲気」は最悪です。

利用者・家族が遠慮して連絡せず、朝になって重症化していた——これが最も危険なシナリオです。

「いつでも電話してください」と本気で言えることが、実は看護師自身を守ります。


それでもオンコールは負担である、という事実

ここまで書いた上で、正直に言います。

オンコールは、やはり負担です。

携帯が枕元にある夜は、完全にはリラックスできません。飲酒も控えます。遠出もしにくい。それは事実です。

だから私たちは、こう考えています。

「負担がない」と嘘をつくのではなく、「負担に見合う設計をする」。

  • 輪番で回す

  • 手当を出す

  • 翌日を調整する

  • 一人で判断させない

  • 情報を共有する

これらが揃っていないステーションのオンコールは、確かに「怖い」です。しかしそれは、オンコールという制度が怖いのではなく、その運用が壊れているということです。


見学のとき、必ず聞いてほしい5つの質問

訪問看護ステーションを見学するとき、オンコールについては、以下を聞いてください。言葉を濁すステーションは、要注意です。

  1. オンコール担当は、月に何回まわってきますか?

  2. 実際に、月に何件くらい電話が鳴りますか?そのうち、実際に出動するのは何件ですか?

  3. オンコール手当は、待機分と出動分が分かれていますか?

  4. 夜間に出動した翌日、勤務の調整はありますか?

  5. 判断に迷ったとき、相談できる相手はいますか?管理者に電話していいですか?

この5つに具体的な数字と仕組みで答えられるステーションは、体制ができています。

「まあ、そんなに鳴りませんよ」としか言わないステーションは、実態を把握していないか、把握していて隠しているかのどちらかです。


まとめ|オンコールは「怖いもの」ではなく「設計されるもの」

  • オンコールは訪問ではなく、まず「相談窓口」である

  • 電話の多くは、電話対応だけで完結する

  • 鳴る夜には理由があり、事前に予測できる

  • オンコール担当者も、一人で判断しない(管理者・主治医に相談できる)

  • 負担を減らすのは根性ではなく、輪番・手当・翌日調整・情報共有という仕組み

訪問看護の夜は、決して「一人で暗闇に放り出される」ものではありません。

そして、こう言うこともできます。

夜中に「息が苦しい」と電話をくれた利用者さんに、朝まで安心して過ごせる方法を伝えられたとき。看取り期の家族から「来てくれてよかった」と言われたとき。

その夜の電話は、あなたが訪問看護師である理由そのものになります。


アカラケア訪問看護ステーション(鎌倉/小田原)では、看護師・理学療法士・作業療法士を募集しています。オンコールの実際について、面談時に包み隠さずお話しします。まずは1日同行見学からどうぞ。

 
 
 

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